タイパの時代に乗り遅れない!DXが加速するD2Cに迫る!

「マーケティングのヒント」は、さまざまな専門家や記者のみなさまの見解をご紹介するコラムです。

小売企業を介さず、顧客に直接商品を販売する「D2C」。
「Direct to Consumer」の略語で、様々な企業で取り組みが進んでいます。

日本語では「直販」という意味で、広義ではユニクロや無印良品のように製造小売もその一部と言えますが、DX時代のD2Cはそれらとは少し異なります。
ECを軸とし、データの利活用によって流通や広告のコストを抑えることを主な目的とします。

【目次】
▼店舗がなくてもヒット商品を生み出す
▼コロナをきっかけにEC市場は変化
▼顧客との繋がりを重要視

▼SNSなどネット広告に軸を置くことで「ファンベース」にも
▼CCCマーケティングからのお知らせ


 

店舗がなくてもヒット商品を生み出す

新型コロナウイルス感染症の流行で緊急事態宣言が出され、多くの飲食店や小売店が営業制限を強いられる中で、着実に売上を確保したスーツ店があります。

東京のオーダーメードスーツを展開するFABRIC TOKYOも、新型コロナの感染拡大の影響を受け、全国19店舗のうち17店舗の営業を停止するという状況に追い込まれました。
しかし、コロナ流行真っ只中に販売した新商品であるジャケットが、当初の想定を超えるヒット商品となったのです*1。

FABRIC TOKYOが大半の店舗を営業停止としておきながら想定を超える件数の予約を獲得する商品を市場に投入できたのは、まさにECと顧客データ活用の成果と言えます。

同社はもとより採寸データなどを基に、顧客に最適な商品を勧めるという形で購入に繋げてきました。
この手法をECの利便性に繋げたほか、コロナ流行が始まった直後の2020年4月には新しいオンラインビジネスを開始しています。

「送って採寸」「自分で採寸」「ビデオ無料相談サービス」といったものです。

「送って採寸」の場合は自分が持っているお気に入りのスーツかシャツをFABRIC TOKYOに送り、それを専門スタッフが採寸、FABRIC TOKYOで注文できるデータを登録することができます。

「自分で採寸」を選ぶと、顧客のもとにメジャーが送られてきます。その上で動画相談サービスを使い、スーツの購入ができるという形です。

スーツと言えば店舗での採寸は欠かせませんが、同社は大半の店舗を営業停止としている状況でも、オンラインで着実にスーツを販売していたのです。顧客データがあってこそ成り立つビジネスモデルです。

 

コロナをきっかけにEC市場は変化

総務省の統計では、コロナをきっかけにネットショッピング利用世帯の割合は急増しています(図1)。

図1 ネットショッピング利用世帯の割合の推移
引用)「新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング-家計消費状況調査の結果から-」総務省統計局

2020年の4月に大きく伸び、翌5月にも微増しています。

そしてコロナによるもうひとつのEC市場の変化として挙げられるのは、利用する年齢層が拡大したことです(図2)。


図2 ネットショッピング利用世帯の年齢別の割合
引用)「新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング-家計消費状況調査の結果から-」総務省統計局

全年齢層で毎年増加を続けていますが、特に65歳以上の利用がコロナをきっかけに急増していることがわかります。

新しくECの使い方を覚えた、という人も少なくないことでしょう。
こうした市場の伸びに対して、企業も対応を取らなければなりません。


 

顧客との繋がりを重要視

D2Cを早期から展開している企業のひとつに、米ナイキがあります。

ナイキブランドの売上高船体に占めるD2Cの割合は2021年には39%に達しました*2。

ナイキのデータ活用はバーチャル試着や顧客データの取得・解析、オンラインでの買い物支援にとどまらず、ファン同士が交流できるオンラインゲームを設置するなど「ファンの維持」にも注力しています。

その他、在庫管理や流通の最適化、マーケティングまでをも自動化しています。

データ利活用で実施するD2Cのメリット

FABRIC TOKYOの例をみても、ナイキの例をみても、顧客データ管理から流通までを自動化するD2Cは、多くのメリットを持ちます。以下のようなことが考えられます。

・余剰在庫の削減=小売にとって在庫保管にかかる倉庫代などは大きな出費のひとつですが、物流の最適化によって手持ちの在庫を最低限にとどめることが可能

・店舗数や面積の削減=店舗は認知・体験の場所として最小化することが可能で、家賃出費を減らすことが可能

・流通費用の圧縮=直接顧客に商品を届けることで、流通による中間コストを圧縮することができる。

・広告費の削減=ECを軸にしたビジネス展開の場合、広告もSNSなどのネットで完結できる

・顧客の利便性向上=時間帯、場所を選ばず商品を購入できる。

 

SNSなどネット広告に軸を置くことで「ファンベース」にも

ECを軸に置いたD2Cはネット、特にSNSでの広告と非常に相性が良いビジネススタイルと言えます。実店舗まで誘導する必要がないからです。

そして、SNSの拡散性を利用した広告手法は「ファンベースマーケティング」にも繋がります。
ファンベース研究の第一人者、佐藤尚之氏はその拡散力についてこう述べています。

世の中に商品や情報やエンタメが溢れかえっている今、『自分にぴったりの商品』や『まさに今の自分に有益な情報』や『自分のツボにハマるエンタメ』にいったいどうやって出会えばいいのだろう。
(中略)
でも、友人が薦めるなら話は別だ。
なぜなら、友人とは『価値観が近い人』だからである。
価値観が近い友人がツボにはまるコンテンツは自分もツボにはまる可能性が高いし、価値観が近い友人が愛用しているモノは自分も愛用する可能性が高いし、価値観が近い友人が熱中するコトは自分も熱中する可能性が高いからだ。」

引用)「ファンベースー支持され、愛され、長く売れ続けるために」佐藤尚之 p72-73

多数のモノやサービスが溢れている現代において、SNSでの「繋がり」が大きな力を持つというわけです。

近年の消費傾向として「タイパ(=タイムパフォーマンス)」が重視されつつあります。
このトレンドに乗り遅れないためにも、データ活用によるスムーズなECのあり方は今後重要になっていくことでしょう。
 

 

 

 


清水 沙矢香
福岡県出身。2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や統計分析を元に多数メディアに寄稿。
 

CCCマーケティングからのお知らせ

D2Cは「ファンベース」なコミュニケーションとの相性が良いということが分かりました。
では、今、生活者が商品やサービスに求めるコミュニケーションとはどのようなものなのでしょうか?

オンラインの企画会議のように、WEB上で生活者の本音を聴くことができるプラットフォームを活用し、生活者のインサイトを読み解いた結果を無料でダウンロードいただけますので、ぜひご覧ください。

また、生活者とコミュニケーションを取りながら施策や商品開発を進めたい方は、ぜひご相談ください。

※CCCマーケティングでは、セキュリティ上厳重に管理された環境のもと、個人を特定できない状態でマーケティング分析を行っております。
※本コラムに記載された商品・サービス名は各社の商標または登録商標です。

参考)
*1「最新 マーケティングの教科書2022」日経BP p66-67
*2「米ナイキがD2Cシフト メタバースから需要予測まで」日本経済新聞 2022年1月14日
   
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