広告は情報強者に向けて作るべき ― 煽り広告で顧客ロイヤルティは得られない

「マーケティングのヒント」は、さまざまな専門家や記者のみなさまの見解をご紹介するコラムです。

「景表法や薬機法のギリギリまで、どう攻めるか?」
広告クリエイティブに携わった経験のある方なら、多かれ少なかれ、誰しも直面する問題です。

攻めた表現を採用した結果、よく見ると注釈だらけになっている広告も珍しくありません。

しかし、「攻めた広告経由の新規購入者の多くが未成年」という事案に遭遇し、愕然としました。

本記事では、現代の広告のあるべき姿について、考えていきたいと思います。
 

【目次】
▼20〜30代ターゲットの高額商材を未成年者が購入
▼エスカレートした広告表現を控えるべき2つの理由
▼「情報強者」が納得する広告こそ目指すべき広告
▼さいごに
▼CCCマーケティングからのお知らせ



20〜30代ターゲットの高額商材を未成年者が購入

あるD2Cブランドに外部チームとして参加したときのことです。

そのブランドは20〜30代の女性をターゲットとしており、美容の悩みに特化した商材を展開していました。初回購入価格が数万円を超える、高額商材です。
 

「新規は獲れるけれどリピートが獲れない」

チームに参加したとき、ブランド経営者が悩んでいたのは、
「新規は獲れるけれど、リピートが獲れない」
ということでした。

新規顧客数は毎月うなぎ上りに増えていましたが、リピート率は低いまま。広告費を投入して新規で売上を稼ぐ、自転車操業的な経営に陥っていました。
 

調べてみると新規購入者の過半数が未成年者

どこに問題があるのかと調べてみて、驚きました。新規購入者の過半数が未成年者になっていたのです。

このブランドが「勝ちパターン」として繰り返し運用してきた広告クリエイティブを確認すると、どれも煽り感が強く、衝動買いを誘発する表現になっていました。

加えて、中高生にも人気のインフルエンサーたちへPR依頼していたため、インフルエンサーへの憧れや応援の気持ちが相まって、未成年者の購入が増加している実態がありました。
 

未成年者が高額商材を購入する原資はどこから?

未成年者たちが、煽り感の強い広告クリエイティブや大好きなインフルエンサーによる推奨をうのみにして購入したなら、リピート購入につながらないのも無理はありません。

経済的余裕も、モチベーションもないと考えられるためです。

しかし、初回購入だけでも未成年者にはかなり高額なはずです。その原資はどこから?と想像したとき、暗澹たる気持ちになりました。

「がんばってアルバイトして貯めたお金」ならまだしも、健全な方法で得たお金とは限らない可能性もあります。

 

エスカレートした広告表現を控えるべき2つの理由 

近年、
「新規顧客がなかなか獲得できない」
という声を聞くようになり、広告表現はエスカレートを続けています。

しかし改めて、煽り広告、盛りすぎた広告、グレーゾーンまで攻めた過激な広告の功罪を考えさせられました。

エスカレートした広告表現を控えるべき理由として、2つのポイントがあります。
 

(1)企業の倫理観的な問題

1つめは「企業の倫理観的な問題」です。

広告表現をエスカレートさせるほど、その広告に反応するのは「情報弱者」になっていく構図があります。ここで考えたいのは「情報弱者は誰か?」です。

実際に反応するユーザーは、情報収集能力の低い層が多い事実と、真摯に向かい合うべきではないでしょうか。

「情報を賢く判別できないほうが悪い」
「企業の広告をうのみにしてだまされるほうが悪い」
という論調はよく見られますが、本当にそうなのでしょうか?

広告の制作現場ではよく、
「中学生でもわかるくらい、わかりやすく」
といわれます。
“それくらいわかりやすい表現でなければ、消費者に伝わらない”ことを戒める言葉です。

しかしいま必要なのは、
「中学生でも勘違いしないくらい、親切に」
であると思います。
 

(2)顧客ロイヤルティの問題

2つめは「顧客ロイヤルティの問題」です。

こちらは企業の収益に直結する観点です。現代のマーケティングの主眼は「顧客ロイヤルティの醸成」に移っています。

CX・パーソナライズ・コンテンツマーケティング……といったあらゆる戦略は、顧客ロイヤルティ(顧客がブランドに抱く信頼や愛着)を醸成するためにあるといっても過言ではありません。

特筆すべきは「煽り広告と顧客ロイヤルティは反比例の関係にある」ことです。

過去、筆者がメーカー勤務時代に担当していたブランドでは、広告クリエイティブごとにリテンションレート(顧客維持率)で顧客ロイヤルティを測定していました。

衝動買いを誘う、煽り感の強い広告ほどリテンションレートが低く、最終利益が低かった
という事実を、強調してお伝えしたいと思います。

 

「情報強者」が納得する広告こそ目指すべき広告

では、私たちがいま目指すべき広告とは、どんな広告でしょうか。
一言でいえば「情報強者をも納得させる広告」です。
 

CPAよりCACで衝動買いを誘発しない

新しい広告を目指すうえでは、前提から変える必要があります。

CPA(Cost Per Action:広告費に対する顧客獲得単価)にとらわれている限り、広告表現のエスカレートは止まりません。衝動買いを誘発するために過激な表現が多くなるからです。

衝動買いの誘発をやめるには、CPAで効果測定するのをやめ、CAC(Customer Acquisition Cost:総コストに対する顧客獲得単価)を見ることが有効です。

CACを指標とすることで、1つの広告で完結させるのではなく、さまざまなコンテンツやコミュニケーションの総合力で顧客を獲得していくマインドに切り替わります。
 

顧客との関係づくりの第一歩に広告を使う

では広告をどう活用するのかといえば、「顧客との関係づくりの第一歩」と定義することをご提案したいと思います。

顧客とブランドが出会い、顧客ロイヤルティ醸成のスタート地点となるファーストコンタクトを、広告の役割とするのです。

今までのように、1件でも多くのコンバージョン獲得を目指す必要はありません。それより、ブランドに対する信頼や愛着の気持ちを、顧客に持ってもらうことが大事です。

そのためには、ミスリードで勘違いさせるのは、もってのほかです。情報弱者でも勘違いしないくらいに親切で、情報強者が納得するほど質実な広告表現を、追求したくなるはずです。
 

良質なコンテンツで顧客との関係性を温める

広告経由で出会いを果たした顧客とは、「コンテンツ」を通じて、関係性を温めていきます。

たとえば、ブランド発信のブログやメディア、SNS、メールマガジンなどです。

このようにして、じっくり関係性を築いた後に購入に至った顧客は、リテンションレートが高くなります。すでに顧客ロイヤルティが醸成されているからです。

結果として、最も企業に利益をもたらす手法といえます。

 

さいごに

本記事では、広告表現について筆者の体験談から感じるところを書かせていただきました。

「情報強者にこそ納得してもらえる広告」は筆者自身が心掛けているポイントであり、根底には「守るべき情報弱者の存在」に対する思いがあります。

それと同時に、実際に取り組みを続けてきて、ビジネスとしてもこれが近道だと実感するところです。










三島つむぎ
ベンチャー企業でマーケティングや組織づくりに従事。商品開発やブランド立ち上げなどの経験を活かしてライターとしても活動中。

 

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