交通費が上昇し続けると人は移動しなくなる?

2023年3月18日に、多くの鉄道でダイヤ改正が行われました。運転本数や運転時刻の変更、新しい路線の開業、運行形態の変更など生活者のみなさまにも影響があるものがあったのではないでしょうか。CCCマーケティング総合研究所では、2月13日~16日に公共交通機関に関する調査を行いました。新型コロナウイルス感染症が流行したこの3年では生活者が外出を控えた期間もあり、交通機関の利用の仕方に変化が起こっています。移動のためには公共交通機関の利用が不可欠という方も多いですが、利用が減少するきっかけは何でしょうか。また、これから先の利用の変化もあるのでしょうか。アンケート結果を見ていきたいと思います。


新型コロナウイルス感染症の流行前と比べると、いずれの公共交通機関も利用は減少傾向             
 最初に新型コロナウイルス感染症が流行し始めてからの、公共交通機関の利用頻度の変化を尋ねました(図1)。「以前から利用していない」を除外すると、鉄道・軌道(路面電車)、バス、タクシーともに「利用頻度は以前と変わらない」が最も高くなっています。しかし「利用することが増えた」に注目するといずれの交通機関も1割に届きません。「増えた」よりも「利用することが減った」「以前は利用していたが利用しなくなった」の方が高く、全体的に減少傾向であることがわかります。

<図1>
交通機関 電車 バス タクシー
 利用が減った理由は、いずれの交通機関も「外出を控えたため」が最も多くなっています(図2)。交通機関別では鉄道・軌道で「買い物や遊びなどの機会が減ったため」「在宅勤務やオンラインでの授業など通勤通学スタイルが変わったため」、バスでは「自家用車やバイクの利用に切り替えたため」、タクシーでは「交通費を節約するため」といった特徴が見られました。
<図2>

公共交通機関 バス 電車利用 外出
 

不便と感じてもその交通機関を継続利用するケースが多い
 各公共交通機関の利用者のうち、この3年の移動の際に不便だと感じた人の割合は鉄道・軌道とバスが4割台、タクシーが3割台となっています(図3-1)。
 不便だと感じた方は、その後の利用はどうしたのでしょうか(図3-2)。不便と感じても、電車・軌道は約6割が継続利用しています。バスは44.6%が継続利用していますが29.7%が自家用車や自転車、徒歩など自力での移動に切り替えています。タクシーでは34.9%が継続利用、26.2%は自力で移動するものの、「移動することをあきらめた・減らした」も22.4%となりました。
 「ほかの公共交通機関を利用」は「継続利用」や「自家用車や自転車・徒歩等での移動」と比べるとそれほど高くありません。不便を感じても他の交通機関での移動手段がなく、その結果継続利用や自力で移動することになった、ということも考えられます。

<図3-1>

<図3-2>
電車 路面電車 バス タクシー 飛行機

運賃20%値上げで生活者は利用を見直し
 移動の手段を選ぶ際には、交通機関の利用のしやすさのほかに、運賃も利用するかどうかの判断材料となるでしょう。図4で、運賃が値上げとなる場合の影響を見ていきましょう。
 5%の値上げ幅であれば継続して利用すると回答した方が8割近くですが、20%の値上げとなると継続利用は34.9%まで落ち込み、自家用車や自転車、徒歩での自力移動が3割を超えています。50%の値上げとなると継続利用は2割台となり、移動をあきらめる・減らすという人が継続利用を上回る結果となりました。「20%の値上げ」は、生活者にとって移動のために必要な交通機関の利用であっても、多くの方が利用を見直す値上げ幅となりそうです。
 また、「移動をすることをあきらめる・減らす」は値上げ幅が  広がるにつれじわじわと増えています。運賃の上昇次第で、人の行動範囲にも影響が出てくるようです。
<図4>

移動 交通手段 交通機関 遅延

 リモートワークの定着、買い物やサービスのオンライン対応の増加など生活スタイルが変化し、生活者の公共交通機関の利用にも変化が起こりました。公共交通機関各社もこれらの変化に対応し、サービス向上を目指していることでしょう。値上げをテーマに実施したCCCマーケティング総研の12月の調査では、「交通費」は今後価格が上昇したまま、あるいはさらに上昇した場合でも「引き続き利用」と回答した方が多く出た品目でした。しかし今回の調査で、上昇幅によっては別の移動手段に切り替える、あるいは移動しないという方が増加することがわかりました。今回のダイヤ改正を生活者の皆さまはどのように感じたか、気になるところです。

参考:値上げに関する意識調査(2022年12月)

 

 




 


 
【調査概要】
調査地域:全国
調査対象者:男女16~79歳のT会員
有効回答数:2,656サンプル
調査期間:2023年2月13日(月)~2023年2月16日(木)
実査機関:CCCMKホールディングス株式会社
調査方法:インターネット調査(Tリサーチ)
 
本調査の集計表を販売しております。
詳しくは、下記をご確認の上、お問い合わせください。
 
【調査内容】
質問数:全13問
<質問項目(8問)>
・現在日常生活をする上で利用している公共交通機関(複数回答)
・この3年(2020年2月以降)での公共交通機関の利用頻度の変化(2020年1月以前と比較)/交通機関別
・利用頻度減少の理由(複数回答)/交通機関別
・この3年(2020年2月以降)で公共交通機関を使った日常生活での移動で便利になったこと(複数回答)/交通機関別
・この3年(2020年2月以降)で公共交通機関を使った日常生活での移動で不便になったこと(複数回答)/交通機関別
・(不便さを感じた方)利用する公共交通機関の変化/交通機関別
・運賃が値上げされた場合の移動手段(値上げ幅ごと)
・交通に対する意識や行動



<属性項目(5問)>
性別/年代、同居家族、居住エリア、居住都道府県、職業

【集計内容】
・単純集計

・地域別クロス集計

【注意事項】
・日本の性年代人口構成比に近い形で回収を行っています。
・クロス集計において、集計対象数が極端に少なくなる質問は出力していません。


【商品名/番号】
品名:「交通機関の利用に関する調査」(2023年2月)
番号:22-019-002

【価格】
集計一式:12,000円(税別)

             
                                                                          


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所 
担当:杉浦・斎藤
[email protected]

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