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プロローグ
CCCマーケティング総合研究所は、生活者のみなさんが暮らす「まち」の明るい未来創りに貢献したいという想いのもと「暮らす人と共に歩み、共に考えるシンクタンク」を目指しています。「まち」には、生活者を中心にビジネスや、地方自治体、公共団体など地域の経済を支える多くの関係者が存在しています。「対談・未来の創り方」では、未来のまち創りに取り組んでいる方をゲストにお迎えし、未来創りへの想いや意義をCCCマーケティング総研所長の新橋と共にお届けします。

農林水産省で農業DXに取組んでいるデジタル企画官阿部明香氏をお迎えし、農林水産省の取り組み、そして地域農業とDXの現状についてお届けする2回目となります。
今回は、阿部様の取り組みについてお話を伺います。

データ活用で産地と消費者の距離は近くなる

新橋:現在、われわれも関わっている6次産業化は農業の収益構造の転換、さらには産地の未来創造につながると思います。6次産業化と農業DXとのつながりで言うと、どんなステップを構想されているのでしょうか。

阿部農林水産省の取組のひとつに「データを活用した農業を実践するデータ駆動型の農業経営の実践」があります。
一方で、気象変動や災害への対応のような農業現場の課題の他、変化する消費者や食のニーズに対応するためには、農林水産行政においても、今まで以上にデータに基づき課題を迅速にかつ定量的に把握してより効果的な解決手段を考えていく必要があります。
その中で、農林水産省には消費者のニーズを把握する必要性がある施策があります。例えば、米、麦、野菜、畜産、今回のテーマとなったお茶等の様々な農産物の振興、6次産業化さらには地域資源を活用した地域振興等、消費者のみなさんに知ってもらい、食べてもらおう、来てもらうといった働きかけもしています。
その際は消費者が求めているものを把握し、市場を捉えた商品づくりや、効果的な施策の展開の重要性を地域・産地の皆様にも理解をしてもらい取り組めるように支援する必要があると感じています。

新橋:現状は、産地の現場と生活者の間にまだ距離があると感じることもありますよね。

阿部:はい。マーケットインの発想とはいうものの、言うは易く行うは難し。消費者のニーズの捉え方や、手法、ノウハウをすべて地域・産地だけで実践するのは現時点ではハードルがあります。
しかし、民間企業はマーケティング部や市場調査部といった消費者理解・マーケット分析を行い、データを基に組織として判断・実践する文化や工程がありマーケティングには一定の投資をしています。
このような消費者理解を地域でも行えれば、農業の産地と消費者を近づけるキーワードとならないかと考えています。消費者の方が何を望んでいるのか。共通認識としてのゴール設定をすることで、数字を基に判断を行う事ができれば、産地の商品に携わる多くの人がいまよりも楽しくなると考えています。



出典:農林水産省提供資料より抜粋

 

データは、様々な商品を生み出す“原油”のようなもの

新橋:数字を軸に判断というのは、大変理想的ですし、コンサルティングする際にわれわれが重視しているポイントでもあります。データという拠り所があると、生産者の方は助かるでしょうし、関係者の方は喜ばれると思いますが、現状ではデータ活用以前の考えるアプローチなどに壁を感じることが多くあります。

阿部:おっしゃる通りです。
最初に、6次産業化のように新しい取組をする上で、データで価値の見える化や商品の方向性の検討や投資判断材料、さらにはPDCAサイクルを回して継続的な改善につなげていくための指標となると考えていました。実際に活動をしてみて思うのは、それを実施していくにはデータを活用する人の商品戦略のような戦略を考えるための前提となる仮説思考が大切だと痛感しています。データとそれを活かす知恵をセットで考えないと回りだしていかないと感じています。

新橋:産物それぞれに求めるデータニーズも異なりますし、活用シーンも異なると思います。
なかなか全体でこれを提供すればいいといった、決め事はできないように感じます。

阿部:政府・行政機関の役割はデジタル化時代を迎え、これから大きく変わると感じています。
今までは、農業経営については企業経営でもヒト・モノ・カネが経営資源でした。しかし、これからのデジタル化時代においては、やはりデータが経営の大きな役割を担ってくると思います。
データをよく石油に例えることがあります。原油ってそのままでは、使えないもので、原油は精製したうえで、例えばプラスチックにしたり、ガソリンにしたりと、ニーズに応じ、加工して使っています。
データも同じように、使いやすい状態にデータを整理しながら、利用者が自分たちの目的に合わせてデータを活用する。
地域・産地でもデータを使って商品のPRや商品づくりのような新しい価値を生み出し、ビジネスをつくっていく流れを地域・産地でも実践できるようにしていけるのが理想だと考えています。
その際に政府は官が持つデータを利用しやすいような形でオープンデータ化していきながら、地域・産地や地方自治体の皆さんにデータにアクセスできる場を提供し、活用できるきっかけをつくることをしていきたいと思います。

データを活かす知恵は人の新たなつながりによって生まれる

新橋:データを石油に例えることで、とても理解が進みますね。データを活かす知恵については、どのようにお考えですか。

阿部:元気な地域ではそのような取組が実践されていますが、人とのコラボレーションが加速する事がキーワードになってくると思っています。データ活用においても地方・産地の中に新たにデータを料理するプロの人たちが入っていくことによって、新しいノウハウの提供や、新しい発見、そして新しいアクションを起こせる環境作りが進めば、その時に行政が担う役割はプラットフォーマーの役割へ変化していくのではないかと個人的には思っています。データや新たな知見を持つ人と地域をつなげるような役割です。そこからビジネスが生まれてくるというのが理想です。

新橋:われわれの考えているところも、まさに同じで、CCCマーケティングの保有するデータを未来の創造に活用していきたいと考えています。
地域の皆さんや、行政の皆さんにも使っていただくことによって、活用する場面が大きく広がるのではないかと考えています。データ活用する世界が広がることは、農業はもちろん、様々な産業活性につながると確信しています。
また、大切にしたいと思っているのは、データをどう読み解釈するのかという部分です。
CCCマーケティング総研として、企業や自治体の皆さんと伴走してデータを一緒に読んでいくことをこれからも大事にしたいと思っています。そして、その結果、地域の方や農家の皆さんのHAPPYに繋がると嬉しいです。

新橋所感
データはただ集めればよいというものではありません。また、分析にあたって外部環境はもちろん、それぞれの企業、自治体の置かれている状況を理解することも不可欠だと思います。農業分野におけるデータ活用は生産効率化、農業経営の経営改善など、多様な可能性がある分野です。その産業を支える農林水産省さんが率先してデータ活用をした取り組みをリードしていただいている状況に明るい未来を感じました。

阿部明香氏プロフィール
農林水産省 大臣官房デジタル戦略グループ デジタル政策推進チーム デジタル企画官

北海道の酪農家出身。外資系IT企業及びコンサルティングファームにてテクノロジーを活用した戦略立案、マーケティング、オペレーション改革やシステム導入のコンサルティングに従事。2019年11月より現職。動物は牛よりも猫が好き。

新橋実プロフィール
CCCマーケティング総合研究所 所長
国内外のコンサルティング会社、シンクタンクに所属。デベロッパー・テーマパーク・ラグジュアリーブランド、百貨店、ホテル、レストラン、カフェ、ショッピングモール、電鉄、エネルギー、食品メーカーなど、川上から川下まで多様な領域のコンサルティングを担当。


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CCCマーケティング総合研究所 
担当:杉浦・斎藤
cccmk-souken@ccc.co.jp

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