【産業動向レポート】_2021年6月

本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。


小さな兆しを捉える力が業績差を生む

コロナ禍の影響は集客面で様々な影響を及ぼしていますが、業態によってコロナ禍での営業への対応力に差が生じてきているようです。コロナ禍が内食需要の回帰を鮮明にした結果、スーパーマーケットは業績が好調に推移していますが、この間に大幅な商品の見直しなどを行っている企業は少なく、今後も好調が維持されていくかどうかは不透明な部分もありそうです。長く好調に推移する内食ですが、ここ数か月の動きをみると内食疲れ、中食回帰の動きが垣間見えてきています。スーパーマーケットと同様にコロナ禍の生活変化による追い風を受けたドラッグストア、ホームセンターの多くも商品構成の変化など、積極的な打ち手を講じている企業は少なく、今後、どこまで好調を維持できるかどうか注目されるところです。

 一方、長く苦戦を強いられてきたコンビニエンスストア業態はこの間に店舗レイアウトの変更、商品構成の見直しを進め、徐々に業績を回復してきています。いまだに都心店舗など、利用客数が大きく落ち込んだ影響から厳しい状況の店舗も一定数占めてはいますが、主要チェーンは業績回復の手がかりを見出しつつあるようです。強化を続けてきた冷凍食品ジャンルはほぼ全チェーンで売上拡大が続き、利用者が安定してきている企業も出てきました。苦戦の要因の一つであった弁当・惣菜は、リモートワークの増大などの環境変化に対応した商品の投下により、売り上げは回復基調が鮮明になってきています。

食を扱う業態の中で最も影響を受けている外食業態は、ほぼ営業できない状況が続き、出口の見えない状況に陥っています。特に売り上げの大きなウエイトを占めるディナー時間帯の利用減は業績悪化に直結し、パブ・居酒屋、ディナーレストランは経営維持が難しい状況に追い込まれています。そんな中で業態転換の動きが徐々に拡大しつつあり、一部では利用急伸の動きも見られています。業態転換のポイントになっているのは外食から中食への転換の視点であり、出来立ての提供を他の食ジャンル業態との差別化要素として成長してきた外食業態が「できたてでなくてもおいしい」商品を提供することで活路を見出す動きが拡大しつつあります。ひと昔前の業態と言われていた「うなぎ専門店」の出店が増加していることもテイクアウトにも対応できる商品力がその背景にあるようです。同様の視点で言えば、日本各地にある有名弁当店は観光流動の停滞とともに大打撃を受け、倒産に追い込まれた企業も多く出ていますが、冷めてもおいしい商品力を活かせば業績反転するポテンシャルも十分にあると言えます。

 アフターコロナにおいても消費には一部で影響が残るとみられていますが、この間に生活者の変化に対応する打ち手を講じているかどうかがこの先の業績につながってくることは間違いなさそうです。わずかな機会を逃さず成長要素を発見できるか。厳しい環境の中でもたゆまぬ努力を続け、生活者のニーズに対応していくことがますます重要になってきそうです。

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