【産業動向レポート】_2021年8月

本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。

新たな業態間競争を生む「冷凍食品」

 コンビニエンスストアは新型コロナウイルス感染症の拡大により業績を大きく後退させた業態の一つです。コンビニエンスストアの成長の源泉となっていたオフィスロケーションは流動の後退により、不採算店が続出し、立地戦略は見直しを余儀なくされています。オフィスロケーションはモーニング、ランチ需要のみならず、深夜の残業を支える役割も果たし、ほぼ全時間帯で機能したため、惣菜・弁当などの商品戦略はオフィスロケーションを軸に検討されることが主流でした。しかし、このロケーションの需要に大きな変化が起きたため、コンビニエンスストアは商品戦略も見直しせざるを得なくなっています。

 リモートワークの拡大により弁当・惣菜の需要が拡大した住宅近接ロケーションは、コンビニエンスストアの新たな収益ロケーションとしての可能性が増大し、住宅近接ロケーションで売れる商品へのシフトチェンジが加速してきています。この流れの中で、商品拡充が進んだ分野の一つが「冷凍食品」です。

「冷凍食品」はスーパーマーケットの安売りジャンルの代表アイテムで、コンビニエンスストアではアイスクリーム以外の冷凍アイテムは売れないと言われてきましたが、コロナ感染者数の拡大による商圏の変化はコンビニエンスストアにもジャンル攻略の機会となっています。

 スーパーマーケットは「冷凍食品」を長く安売りアイテムとして活用してきましたが、コンビニエンスストアではセブン-イレブンを筆頭にクオリティ訴求の商品をラインナップし、スーパーマーケットとの違いを鮮明に打ち出しています。コロナ禍でコンビニエンスストアでの「冷凍食品」購入者数が増加すると、その商品クオリティの高さは一気に認知され、わずかな期間で市場定着し、コンビニエンスストア各社の売上を支えるジャンルとなってきています。

 こうして「冷凍食品」はスーパーマーケットとコンビニエンスストアの新たな競争要素の一つとなっていますが、外食もそのブランド力を活用して「冷凍商品」への進出を活発化させています。当初は、ブランドネームを貸すだけの商品が目立ちましたが、コロナ禍で店舗の営業が出来ない状況になると、新たな売上を構築する商品として、店舗での最終調理前の半製品などを家事軽減のアイテムとして販売を開始するなど、従来とは異なる動きを見せています。そして、その結果、売上を伸ばす企業も出てきています。

 コロナ禍は様々な業態の変化をもたらしていますが、「冷凍食品」についてはコロナ禍による消費環境の変化が、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、外食の3業態の綱引きを激化させるアイテムとなっています。約1兆4000億円規模になる国内の冷凍食品市場をどのチャネルが最も大きなシェアを握っていくのでしょうか。メーカーのチャネル戦略と共に、リテイル間の綱引きは今後、さらに活発化していくことが予想されます。

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