【産業動向レポート】_2021年10月

本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

コロナ禍を乗り越える外食の進化

 東京、大阪などで飲食店に対する営業時間の時短要請が解除され、都市部での外食回復の動きが強まってきています。デイタイムの集客は急回復傾向にあり、立地による格差はほとんど見られませんが、ディナータイムの利用客数は増加傾向にあるものの、アルコールを取り扱うパブ・居酒屋はまだ回復途上といった状況です。外食については、営業時間の短縮と利用人数の制限が大きな足かせとなってきましたが、この2つはコロナ感染者数の激減によって解除されてきており、今後、さらに外食の利用増が見込まれます。特に利用人数の制限緩和は、忘・新年会シーズンを迎える中、依然として厳しい状況にあるパブ・居酒屋にとっては期待される要素です。

 このように利用回復の流れが強まる中で、外食各社の大きな課題となっているのが働き手の確保です。新型コロナウイルス感染症拡大によって営業休止に追い込まれた外食各社はパート・アルバイトを抱えておくことが難しくなり、現在は社員を中心に最少人員で店舗運営を行っているところが多くあります。営業時間の時短要請や営業休止を受けて社員についても雇用維持の観点から他社への出向や副業奨励などで対応する動きが見られていましたが、急激な需要回復の動きに合わせ、社員を現場に戻す動きが強まってきています。

 しかし、多くの企業ではこの先の感染状況次第で、また営業休止に追い込まれるおそれもあり、人員確保の判断に頭を悩ませているところが多いようです。利用人数の制限緩和も進み、宴会などの需要も期待され、今後は人員体制の確保が各社の業績に大きな影響を及ぼすことになりそうです。

 外食は長く受難の時期にありましたが、この間に様々な経営努力を行ってきました。中でもメニュー面の工夫は目覚ましいものがあります。ラーメン業界のトレンドを採り入れたそば業態の「つけそば」メニューの拡大、天ぷら業態における「串天ぷら・天ぷら串」の導入、ディナーレストラン業態におけるテイクアウト需要、保存需要を見込んだ「グラタン」メニュー導入の活発化など、枚挙のいとまがありません。また、和食×ラーメン、中華×カレーなど、業態を越境するようなメニューの投下も増加傾向にあり、注目されるところです。

 こうした直近の動きをみると、①既存資源を活かしたメニュー開発、②テイクアウト・中食需要に対応したメニュー開発が大きなポイントになっているようです。

 感染者数が激減し、やっと外食にとっては反転する機会となっていますが、人員の確保というオペレーション上の課題、さらには生鮮三品や各種食品原料の値上げといった原価高騰の課題が押し寄せてきており、悩ましい状況が続いています。新たなニーズを探索しつつ、筋肉質でスピーディーな運営がますます重要になってくることは間違いありません。

 

 

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