【産業動向レポート】_2021年11月

本レポートは、CCCマーケティング株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
 

広がる“価値ある高価格商品”需要

 長く集客面で苦労してきた小売・外食業界でしたが、新型コロナウイルス感染者数の減少から各地で流動拡大の動きが強まり、全体に明るい兆しが広がってきました。リモートワークが進展し、かつてほどの利用は望めないものの、オフィスロケーションの流動も回復傾向が強まり、コンビニエンスストア、ドラッグストアなども苦戦が続いたロケーションでのパフォーマンス改善が進んできています。ほぼ短縮営業となっていたショッピングモールも通常時間の営業に戻した施設も増え、利用時間帯は拡大傾向にあります。夜間の流動も増加基調にありますが、ディナー帯の外食需要は依然として苦戦が続いています。一方でコンビニエンスストアやスーパーマーケットでは夜間の利用が増加傾向にあり、ディナー帯に限って言うと、依然として内食・中食利用の割合が高い状況にあるようです。

 流動が落ち込む中で、ラグジュアリーブランドや高級時計などは堅調な動きを維持し、存在感を示しています。コロナ禍による外出機会の減少は化粧品需要にも大きな影響を及ぼしましたが、高価格の基礎化粧品やブランドコスメは好調な動きを示すものもあり、コロナ禍の影響を受けない“価値ある高価格商品”の需要は様々なところで見られる傾向です。

集客面で苦労してきた外食業界は、この間に単価引き上げに向けた動きが加速しています。今後も不透明な集客や様々な原材料価格の高騰も視野に、価格引き上げは必然の動きとも言えます。しかし、コロナ禍による生活者の生活防衛意識は強まっており、単なる価格引き上げは利用減少につながるおそれもあるため、判断は分かれるところです。

 好調な動きを示しているラグジュアリーブランドを見ても、今までにないブランドコラボや販売アイテムの拡張を進めていたり、業界全体が重い動きの中で存在感を示すコスメでも限定アイテムの投下や機能強化を進めていたり、高価格につながる要素の付加が需要獲得の共通要素となっています。

 スーパーマーケットの惣菜の中でも複数のアイテムを組み合わせたプレート型にしたものの動きがよく、従来商品とは異なる価値の打ち出しが価格上昇となっても需要増という結果につながっています。コンビニエンスストアのデザートでもデパ地下ブランドを冠したアイテムが好調な動きを示しており、それぞれの業態に“価値ある高価格商品”需要の可能性がありそうです。

 流動拡大が続き、利用客数の増加が期待されるところですが、今後のあらゆるリスクを想定し、自社の持つ資源を見直し、利用単価を引き上げる要素はないか、次の一手を講じておくことも重要になってくるでしょう。22年は様々な価格高騰要素があり、価格上昇が利用減とならないよう企業の知恵や工夫が試される一年となりそうです。

 

 

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担当:杉浦・斎藤