2022年9月

本レポートは、CCCMKHDがT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。

小ポーションで消費抑制を乗り切る
 様々な値上げの動きが生活を直撃する中で、各業態の動きをみると、買い上げ点数や利用機会などでやや消費を抑制する動きがみられるようになってきています。一方、コロナ禍で抑制傾向が続いてきたレジャー・旅行消費は回復傾向が強まり、様々な消費の中で拡大傾向が鮮明になっています。年末に向けては外食チェーンが春先に続いて値上げする動きがみられるほか、食品・調味料も様々なアイテムで再値上げの動きが強まっており、リテイルの多くから消費の減速を懸念する声が聞かれています。
 値上げによる消費減速・利用減を懸念する中で、リテイル・外食各社では生活者の利用抑制を最小限にとどめるような工夫・取り組みが進められています。
 コンビニエンスストアではコロナ禍直後に利用が大幅に落ち込み、家族利用への対応、買い上げ点数増をねらって小ポーションメニューを導入する動きが強まりましたが、この小ポーションメニューは値上げの声が各所で聞かれるようになって以降、利用が堅調に推移しています。利用者の幅も広がっており、家族利用のプラスワンの買い足し需要のほか、摂取カロリー抑制を意識する女性層や1回当たりの食事量が減っているシニア層、小腹満たしの若年層など、多様な層の利用獲得につながっていることが堅調な売れ行きにつながっているようです。
 
利用単価でも小ポーションによる併買効果が単価減をゆるやかにする効果を見せており、値上げが続くこの冬以降、これらのアイテムの拡充は業績に影響する可能性もありそうです。
 外食でも小ポーションメニュー、ハーフサイズメニューの導入が広がってきています。コロナ禍以降、安定した動きを見せる中華業態では、小ポーションメニューの導入が一般化しつつありますが、コンビニエンスストアと同様に客層拡大につながっているケースが目立っています。洋食ファミリーレストランでは、ファミリー需要の回復が後れ、シニア利用が落ち込んでいるチェーンが散見されていますが、小ポーション対応などが進んでいないことも中華業態の利用拡大との違いになっていると考えられます。
 コンビニエンスストアや先行して小ポーションメニュー導入に動いている外食企業の利用をみると、単価積み上げの効果とともに利用時間帯による浮き沈みを安定化させる点でも効果を上げているようです。
 エネルギーや原材料高騰の流れは今後も続いていくことは必至です。また、価格上昇は様々なリテイルの利用を減少させる要素となり、この冬以降、その影響は確実に各所で出てきそうです。この値上げラッシュによる消費減速の流れにどう向き合って、利用減少を最小限にとどめるか。原材料の見直しなどで価格上昇を食い止める工夫も行いつつ、生活者の「価格」以外のニーズに対応を図れるか。この冬以降、小売・外食の業績は各社の知恵・工夫の差で大きく異なってきそうです。

産業動向 利用減少 ハーフサイズ 小ポーション コロナの影響

※レシーカとは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員に提供する家計簿アプリ。
レシーカユーザー(約5万人)のレシートデータを分析することができる。


【お問合せ先】
CCCマーケティング総合研究所
担当:杉浦・斎藤